取扱分野

離婚が認められる一般的な理由

日本では、夫婦が離婚に合意していない限り、離婚するには、法律(民法770条)に定められた一定の理由が必要です。

民法770条

1号 配偶者に不貞な行為があったとき。
→不貞な行為とは、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶことです。性的関係に至らない男女関係は、5号(後述)に該当し得ます。

2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

→悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助義務(民法752条)を行わないことです。相手を置き去りにして家を出る、相手を家から追い出すことなどが該当します。「正当な理由なく」ですので、たとえば相手の暴力・DVを避けるために家を出る場合は、これに該当しません。

3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

→生死不明とは、生存の証明も死亡の証明もできないことであり、単なる行方不明では足りないとされています。但し、長期間配偶者に対して音信普通の状態であれば、前述の2号又は5号(後述)に該当する場合もあります。

4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

→強度の精神病とは、統合失調症などの高度の精神病を指し、アルコール中毒やヒステリー、神経衰弱症などは含まれないとされています。(後述の5号に当たる場合はあります。)

※上記1号から4号の理由がある場合でも、裁判所の判断で、離婚の請求が棄却される場合もあります。(民法770条2項)

5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

→多くの離婚事案は、この5号に当たるかどうかが問題となります。

5号に該当し得る場合:

  • 暴力、言葉の暴力、性暴力
  • 浪費、多額の借金
  • 正当な理由なく働かない
  • 相手方配偶者の親族(親兄弟など)との不和、相手方配偶者が配偶者と自分の親族との関係の調整に非協力的であること
  • 正当な理由のない性交渉の拒否、性的不能
  • 性格の不一致、価値観の不一致、生活スタイルの不一致
  • その他(結婚生活に関連したあらゆる事由が該当し得ます)

※上記の理由があれば直ちに離婚事由になるわけではなく、結婚生活における様々な要素が総合的に考慮され、婚姻が破たんしており、回復の見込みがないと裁判所が判断した場合、離婚が認められることになります。

※長期の別居が続いている場合、5号に該当すると認定されやすくなります。

※有責配偶者からの離婚請求は、かつては認めないというのが判例の立場でしたが、有責性の程度、内容、別居期間の長さ、未成年の子の有無、有責配偶者側の誠実な態度の有無などによっては、認められる可能性があります。

※離婚について夫婦が合意できない場合、いきなり離婚裁判を起こすことはできず、まずは家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。

財産分与

財産分与とは、夫婦の共有財産を、離婚に伴い清算することです。

 

日本では、夫婦別産制が取られています。夫婦が結婚前に取得した財産及び婚姻中に自分の名義で得た財産(たとえば親から相続した財産や贈与を受けた財産など)は、夫又は妻の単独財産(特有財産ともいいます)です(民法762条1項)。

 

ただし、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、夫婦の共有に属すると推定されます(民法762条2項)。
あくまで「推定」ですので、その財産が夫又は妻の特有財産であることを証明できれば、この推定は覆ります。

 

夫婦の一方が外で働き、片方が専業主婦又は専業主夫として家庭内における家事労働を担当している場合、その夫婦が婚姻中に形成した財産は、原則として夫婦の共有財産と考えられます。たとえば、夫が会社員、妻が専業主婦で、夫のみが資金を拠出し、夫の名義でローンを組み、夫の名義で自宅を購入した場合でも、その土地建物は財産分与の対象となります。

 

財産形成に対する寄与割合(貢献度)は、原則として夫婦平等(50%ずつ)とされるのが一般的です。
もっとも、夫又は妻の一方が高額所得者であり、個人の特殊な能力や努力により多額の資産を形成するに至ったと考えられるような場合には、家事を担う方の寄与割合が5割よりも低く認定されることもあります。

 

プラスの財産がない場合、あるいはプラスの財産はあるが、夫婦の生活のために負った債務(住宅ローンなど)を差し引くとプラスにならない場合は、財産分与の請求は認められません。

 

財産分与手続きの流れ

 

慰謝料

離婚原因となる行為(不倫やDVなど)、あるいは離婚そのもの(相手の行為により離婚に追い込まれること)から生じる精神的苦痛に対する損害賠償金です。

 

結婚生活が破たんした原因、有責行為の内容や程度、被害者側の配偶者のこうむった精神的苦痛の程度、結婚生活の長さ、加害者側の配偶者の資力、社会的地位、年齢など様々な要素が考慮されます。

 

※不倫の相手方への請求
不倫(不貞行為)は、配偶者の一方と相手方との共同不法行為です。不倫の被害者となる夫又は妻は、不倫をした配偶者と不倫の相手方との両方に慰謝料請求をすることもできますし、一方のみに請求することもできます。

婚姻費用

お答えします!
  • 夫が生活費を渡してくれない。収入も明かさない。妻が取れる対抗策は?
  • 約束した生活費の支払が滞っている。強制的に支払わせる方法は?
  • 私が法的に請求できる婚姻費用の金額は?
  • (支払う側の立場から)十分な生活費を渡しているのに相手が浪費して困っている。自分の支払額が正当であることを法的に証明する手段はないか。

婚姻費用の基礎知識

婚姻費用とは
Q1
婚姻費用とは何ですか。
A1

婚姻費用は、平たく言えば、夫婦の生活費のことです。夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担すると定められています(民法760条)。また、夫婦には、互いに協力して扶助する義務があります(民法752条)。

したがって、夫婦仲が悪化して別居に至った場合、あるいは同居していても収入のある側の配偶者がない(少ない)側の配偶者に十分な生活費を渡さなくなったような場合、それにより生活が困窮することになる配偶者は、相手方配偶者に、婚姻費用の支払いを請求することができます。

養育費との違い
Q2
婚姻費用と養育費の違いは何ですか。婚姻費用には養育費の分は含まれないのですか。
A2

婚姻費用は、婚姻中の夫婦の生活費を指しますが、片方の親が子どもを監護している場合は、その子どもの生活費も含みます。他方、養育費は、子どもの生活費(衣食住、教育、医療費を含む)のみです。基本的に、婚姻中は婚姻費用請求、離婚後は養育費の請求が問題になります。

生活保持義務
Q3
別居中の夫(妻)は、ろくに生活費を渡してくれません。聞けば自分の生活で手一杯とのこと。そのような場合には婚姻費用を払わなくてよいのですか。
A3

婚姻費用の分担義務は、自分の生活を犠牲にしない限度で相手方の最低限の生活の扶助を行う義務(生活扶助義務)ではなく、自分の生活と同程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。つまり、婚姻費用の支払い義務を負う側の配偶者は、自分の生活レベルを落としてでも、相手方に同程度の生活をさせるだけの金銭を支払う必要があります。

具体的な手続は?
Q4
婚姻費用を払ってもらうには、どのような手続をすればよいのですか。
A4

通常は、まず当事者間での協議を試みます。当事者間の協議が調わない場合(あるいは最初から協議が成立する見込みがない場合)、家庭裁判所に調停を申し立て、それでも解決しない場合は、審判裁判手続に進むことになります。(初めから審判を申し立てることも可能です。)
調停も、両者の合意に基づく解決方法ではありますが、第三者たる調停委員会(調停委員2名と裁判官1名で構成)が客観的な意見を述べることで、解決に結びつくことが多くあります。調停が不成立となった場合は、自動的に審判に移行し、裁判所の判断が下されます。調停申立て後、第一回目の期日が指定されるまでに、1か月程度はかかりますので、できるだけ早期に調停申立てをすることをお勧め致します。

婚姻費用の金額はどうやって決まる?
Q5

調停や裁判になった場合、婚姻費用の金額はどうやって決まるのですか。

A5

現在の実務では、「標準的算定方式」と呼ばれる計算方法で婚姻費用の額を算出することが一応定着しているといえます。多くの実務家が、この算定方式に基づく金額が安すぎると批判しており、日弁連(日本弁護士連合会)も新しい算定方式を提言しています(https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html)。しかし、少なくとも現状、裁判所では標準的算定方式が採用されている以上、同方式による金額がいくらかという点は極めて重要です。
「標準的算定方式」とは、婚姻費用の分担額につき、義務者世帯及び権利者世帯が同居していると仮定して、義務者及び権利者の各基礎収入の合計額を世帯収入とみなし、これを、標準的な生活費指数(成人100、15歳以上20歳未満の子90、15歳未満の子55)によって推計された権利者世帯及び義務者世帯の各生活費で按分して割り振られる権利者世帯の婚姻費用から、権利者の基礎収入を控除して、義務者が分担すべき婚姻費用を算定するとの方式(東京・大阪養育費等研究会「簡易迅速な養育費等の算定を目指して‐養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案‐」判例タイムズ1111号285頁以下)です。

これだけだと、何のことか良く分かりませんね。順を追って説明します。
ちなみに、婚姻費用と養育費とでは、計算方法が異なります。

ステップ1

まず、権利者(支払を求める側)の世帯に割り振られるべき婚姻費用の額を算出します。どのようにしてその額を求めるかというと、次の計算式によります。

(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×{(権利者の生活費指数+子の生活費指数)÷(義務者の生活費指数+権利者の生活費指数+子の生活費指数)}

ステップ1-1

(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
を算出する。要するに、夫婦二人の基礎収入を合わせた金額が、計算の基礎になるということです。夫婦はお互い助け合い、相手に自分と同程度の生活をさせる義務がありますので、どちらかが極端に収入が高くどちらかが極端に低い(専業主婦(夫)の場合、0円ということも良くあります)場合でも、両方を合わせた金額を基礎とすることで、実際の生活レベルが夫婦間で極端に違うというような不公平な事態を阻止しているのです。
また、この「基礎収入」とは、額面収入や手取り額のことではなく、総収入から公租公課、職業費及び特別経費を控除した額(いわゆる可処分所得)です。給与所得者の基礎収入は、総収入の概ね34~42%、自営業者の場合は総収入(経費を控除した所得)の概ね47~52%で計算されます(松本哲泓「婚姻費用分担事件の審理―手続と裁判例の検討」家庭裁判月報62巻11号57頁)。高額所得者の方が割合が小さくなります。

ステップ1-2

(権利者の生活費指数+子の生活費指数)÷(義務者の生活費指数+権利者の生活費指数+子の生活費指数)
を算出する。生活費指数とは、成人が必要とする生活費を100とした場合の割合で、標準的算定方式においては、14歳までの子は55、15歳以上の子は90で計算されます。

ステップ1-3

ステップ1-1で求めた基礎収入合算額にステップ1-2で求めた割合を乗じることで、権利者世帯に割り振られる婚姻費用が算出されます。
 

ステップ2

権利者世帯に割り振られる婚姻費用から、「権利者の基礎収入」を控除することで、義務者が権利者に支払うべき婚姻費用の額が算出されます。

計算例
言葉だけでは分かりづらいので、例を示してみましょう。

例:
A男さん(45歳、給与所得者、年収1000万円)とB子さん(38歳、パート主婦、年収50万円)の夫婦には、長女のC子さん(15歳、高校生、年収0円)と長男のD男さん(8歳、小学生、年収0円)がいる。A男さんとB子さんの夫婦仲が悪化し、B子さんは子ども2人を連れて別居した。標準的算定方式に基づきB子さんがA男さんに求められる婚姻費用の額はいくらか。

ステップ1-1

A男さんの基礎収入:10,000,000円×0.35=3,500,000円
B子さんの基礎収入:500,000円×0.42=210,000円
3,500,000円+210,000円=3,710,000円

ステップ1-2

A男さん、B子さん、C子さん、D男さんの生活費指数=それぞれ100、100、90、55
(100+90+55)÷(100+100+90+55)=245÷345≒0.71

ステップ1-3

3,710,000円×0.71=2,705,100円

ステップ2

2,705,100円-210,000=2,495,100円

以上のとおり、婚姻費用の額は年額では2,495,100円、月額では約20万8000円となります。

上記の計算過程は複雑ですので、裁判所は一般の方向けに、「簡易算定表」と呼ばれるものを公表しています。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

裁判所が公表している簡易算定表のうち、「表14 婚姻費用・子2人表(第1子15~19歳、第2子0~14歳)」)を参照すると、グラフに示される金額と上記計算結果がほぼ同じであることが分かります。

しかし、実際には、家族構成が算定表の事例と適合しなかったり、特殊な事情があり算定表をそのまま当てはめるのが適切でないご家庭も沢山あります。
ご自分のケースについての具体的な算定を当事務所に依頼されたい方は、
ぜひお問い合わせ下さい。

算定表の金額では足りない
Q6
算定表の金額(標準的算定方式に基づく金額)では、私や子どもの生活を賄うには足りません。算定表に従わなければならないのですか。
A6

家庭裁判所において婚姻費用の額が争われる場合、裁判所は、金額を簡易迅速に算定するため、標準的算定方式を用いることが、一応実務上定着しています。しかし、もちろん、常に標準的算定方式通りでなければならないということはありません。
相手方との交渉次第で、算定表の金額を大きく超える金額の婚姻費用を払ってもらうことも、もちろん可能です。

また、標準的算定方式を基準にする場合でも、子どもの私立学校の学費、学習塾にかかる費用、子どもが定期的に通院している場合の医療費などがかかっている場合など、婚姻費用の金額が算定表より増額されるケースは多くあります。

大切なのは、裁判所が婚姻費用の増額事由として認めている要素を、法的理論の裏付けと共に主張することです。
裁判所はあくまで中立性・公平性を保ちますから、裁判所の方から積極的に片方の当事者に助言をすることはありません。当事者の方から、法的に筋の通った主張をしない限り、裁判所の判断の対象としてもらえないのです。
それに、当職がこれまでに数多くの離婚調停・養育費請求調停事件を担当してきた中で、標準的算定方式の理論を十分に理解していないと思われる(特殊事情があるにも拘わらず、算定表通りとしか言わない)調停委員にも会いました。そのような場合は、なぜその事件では「算定表通り」の金額が妥当でないのか、筋道を立てて説明する必要があります。判例や有力な学者の論文を引用することも重要です。

すもも法律事務所では、精緻な理論構成、判例リサーチに基づき、算定表の金額を大幅に超える金額の婚姻費用を獲得した実績があります。

算定表通りの金額では足りないと考えておられる方、
ぜひすもも法律事務所にご相談下さい。

算定表に当てはまらないケースの計算もできますか
Q7
私と夫の間には2人の子(長男、長女)がいますが、長男は男同士、夫と暮らしたいと望んだため、私は長女だけ連れて家を出ました。このような場合でも、夫に婚姻費用の請求ができますか。子ども2人を連れて出た時よりも金額は低くなってしまいますか。
A7

算定表に当てはまらないケースは、実際には数多く存在します。質問のケースのように、別居中の夫婦の双方がそれぞれ子どもを監護しているケースの他、

-子どもが4人以上いるケース
-義務者(支払う側)に前婚の子がおり養育費を送金しているケース
-義務者(支払う側)に認知した婚外子がおり養育費を送金しているケース

などが考えられます。

このような算定表に当てはまらないケースでも、標準的算定方式で用いられている基本的な考えを応用することで、適切な婚姻費用の額を算出することが可能です。
ご自分のケースについての具体的な算定を当事務所に依頼されたい方は、
ぜひお問い合わせ下さい。

義務者(支払う側)の立場から
Q8
私は夫の立場です。専業主婦の妻との間には5歳の子がいます。妻から、もう一緒に暮らしたくない、出て行ってほしいと強く言われ、仕方なく私は自宅を出て、一時的に賃貸アパートを借りて一人で暮らしています。ところで、妻子が住み続けている自宅は私名義で購入したものであり、毎月の住宅ローンの支払は私がしています。このような場合でも、妻子への生活費として、標準的算定方式に基づいた金額を全額支払う必要があるのですか。住宅ローンの支払と、アパートの家賃の支払とで、生活が苦しいです。
A8

この場合、義務者(夫)には、住宅ローンの支払と、義務者自身の住居関係費(家賃)の支払というように、住居費の負担が二重に発生しています。確かに、義務者の年収がそれ程高くない場合には、相当な負担だと思われます。但し、この場合でも、住宅ローンの負担額を、丸々妻子への生活費(婚姻費用)から差し引くということにはなりません。住宅ローンの支払は、義務者(夫)自身の資産形成という側面があるからです。そして、配偶者や子への生活費の支払義務(生活保持義務)は、当然、資産形成よりも優先されます。
先例を見ても、裁判所は、個別具体的な事情を考慮して、住宅ローン支払額を全く考慮しない、一部を考慮する(住宅ローン支払額の一部を婚姻費用から差し引く)、などの調整を行い、当事者間の公平を図っています。

ご自分のケースについての具体的な算定を当事務所に依頼されたい方は、
ぜひお問い合わせ下さい

親権・監護権

親権とは、未成年の子どもが一人前の社会人になれるように監護教育するとともに、その財産を維持管理するためにその父母に認められた権利及び義務のことです(民法820条、824条)。「親権」の名のごとく権利でもありますが、同時に義務でもあります。

 

日本では、父母が結婚している場合、共同で親権者となるのが原則です(共同親権、民法818条1項、3項)。父母が結婚していない場合や、子どもが生まれる前に離婚した場合(離婚時に母が妊娠していた場合)には、母の単独親権となります。

子どもが生まれてから夫婦が離婚する場合、父母のいずれかが単独で親権を持つことになります(単独親権)。

 

離婚時に未成年の子どもがいる場合には、夫婦のどちらが親権者となるかを必ず決めなければなりません(民法819条1項)。

夫婦間の協議、あるいは離婚調停の場で、離婚については合意できても、親権者の決定については合意できないというケースは珍しくありません。その場合は、審判、更には裁判で、親権者を決定することになります。

 

※親権者の決定要素

裁判所が親権者を決定する場合、様々な要素を考慮し、子どもの利益と福祉を基準として決定しています。具体的には、父母側の事情としては、監護能力(年齢・性格・教養・健康状態等)、精神的・経済的家庭環境(資産・収入・職業・住居・生活態度等)、教育環境、子どもに対する愛情の程度、これまでの監護状況、親族の援助などが考慮されます。子どもの側の事情としては、年齢、性別、心身の発育状況、現在の環境への適応状況、子ども自身の意思・意向、父母や親族との情緒的結びつきなどが問題とされています。

 

子どもが15歳以上であれば、裁判所は、子どもの陳述(話すこと)を必ず聞かねばなりません。また、実務では、子どもがおおむね10歳以上であれば、自分の意思を表明できるとして、その意思を確認しています。

 

※有責配偶者と親権

実務上、離婚の有責性と親権の決定とは別に考えられています。したがって、夫婦の一方が不倫をした結果、離婚に至ったからといって、直ちに不倫をした夫又は妻が親権を持てないというわけではありません。もっとも、不倫をした結果、子どもの監護養育がないがしろにされたなどの理由で、親権者としてふさわしくないと判断されることはあります。

 

※親権者と監護権者の分離

前述のように、親権には子どもを監護教育する権利が含まれます。ただし、身体上の監督保護をする権利(平たく言えば、子どもを手元で育てる権利)を特に分けて「監護権」ということがあります(民法766条1項参照)。

たとえば、日々の養育は母が行った方が良いが、浪費癖があり、子どもの財産管理を任せるのに適当でないというような場合、母が監護権を持つが、父が親権を持つというように夫婦で取り決めたり、家庭裁判所がそのように決定することがあり得ます。

養育費

お答えします!
  • 養育費の話をしないまま離婚してしまった。今からでも請求できる?
  • 約束した養育費の支払が滞っている。強制的に支払わせる方法は?
  • 私が子どものために法的に請求できる養育費の金額は?
  • 過去の養育費(未払い分)についても請求できますか?
  • (支払う側の立場から)再婚をして新しく子どもができたので、前妻に約束した養育費の支払がきつくなってきた。養育費の減額を請求できますか?
  • (支払う側の立場から)私の知らない間に、別れた妻が再婚しており、子ども(前妻が親権者)が再婚相手の男性の養子になっていた。このような場合でも、今までと同じ養育費を払い続けなければならないのですか?

 

養育費の基礎知識

養育費とは
Q1
養育費とは何ですか?
A1

には、子どもに対する扶養義務があります。夫婦が離婚したり、離婚に至らなくとも別居に至る場合、子どもの監護養育をする方の親(監護親。離婚している場合は通常親権者が監護権者と一致する。)は、子どもにかかる費用を日々負担することになります。しかし、この養育費は双方の親がその収入に応じて負担すべき費用であるため、監護親は、非監護親に対して、収入に応じた分担(養育費の支払い)を求めることができます。

婚姻費用との違い
Q2
婚姻費用と養育費の違いは何ですか。婚姻費用には養育費の分は含まれないのですか。
A2

婚姻費用は、婚姻中の夫婦の生活費を指しますが、片方の親が子どもを監護している場合は、その子どもの生活費も含みます。他方、養育費は、子どもの生活費(衣食住、教育、医療費を含む)のみです。基本的に、婚姻中は婚姻費用請求、離婚後は養育費の請求が問題になります。

生活保持義務
Q3
夫(妻)と離婚後、子どもは私が引き取りました。しかし、夫(妻)は、子どもの養育費を十分に支払いません。聞けば自分の生活で手一杯とのこと。そのような場合には養育費を払わなくてよいのですか。
A3

養育費の支払義務は、自分の生活を犠牲にしない限度で子どもの最低限の生活の扶助を行う義務(生活扶助義務)ではなく、自分の生活と同程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。つまり、離婚して子どもを引き取っていない方の親は、自分の生活レベルを落としてでも、子どもに同程度の生活をさせるだけの金銭を支払う必要があります。

具体的な手続は?
Q4
養育費を払ってもらうには、どのような手続をすればよいのですか。
A4

通常は、まず当事者間での協議を試みます。当事者間の協議が調わない場合(あるいは最初から協議が成立する見込みがない場合)、家庭裁判所に調停を申し立て、それでも解決しない場合は、審判裁判手続に進むことになります。(初めから審判を申し立てることも可能です。)
調停も、両者の合意に基づく解決方法ではありますが、第三者たる調停委員会(調停委員2名と裁判官1名で構成)が客観的な意見を述べることで、解決に結びつくことが多くあります。調停が不成立となった場合は、自動的に審判に移行し、裁判所の判断が下されます。調停申立て後、第一回目の期日が指定されるまでに、1か月程度はかかりますので、できるだけ早期に調停申立てをすることをお勧め致します。

養育費の金額はどうやって決まる?
Q5

調停や裁判になった場合、養育費の金額はどうやって決まるのですか。

A5

現在の実務では、「標準的算定方式」と呼ばれる計算方法で養育費の額を算出することが一応定着しているといえます。多くの実務家が、この算定方式に基づく金額が安すぎると批判しており、日弁連(日本弁護士連合会)も新しい算定方式を提言しています(https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html)。しかし、少なくとも現状、裁判所では標準的算定方式が採用されている以上、同方式による金額がいくらかという点は極めて重要です。
「標準的算定方式」とは、養育費の額につき、権利者・義務者双方の税込収入から、税法等で理論的に算出された公租公課の標準的な割合、統計資料に基づいて推計された職業費と特別経費の標準的な割合を控除した基礎収入の合計額を、権利者、義務者及び子どもの標準的生活費を指数化してこれに基づき按分する方式(東京・大阪養育費等研究会「簡易迅速な養育費等の算定を目指して‐養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案‐」判例タイムズ1111号285頁以下)です。

これだけだと、何のことか良く分かりませんね。順を追って説明します。
ちなみに、婚姻費用と養育費とでは、計算方法が異なります。

ステップ1

まず、子の生活費を求めます。どのようにして求めるかというと、次の計算式によります。

義務者の基礎収入×{子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+子の生活費指数)}

ステップ1-1

義務者の基礎収入を算出する。
この「基礎収入」とは、額面収入や手取り額のことではなく、総収入から公租公課、職業費及び特別経費を控除した額(いわゆる可処分所得)です。給与所得者の基礎収入は、総収入の概ね34~42%、自営業者の場合は総収入(経費を控除した所得)の概ね47~52%で計算されます(松本哲泓「婚姻費用分担事件の審理―手続と裁判例の検討」家庭裁判月報62巻11号57頁)。高額所得者の方が割合が小さくなります。

ステップ1-2

子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+子の生活費指数)を計算する。婚姻費用と同じく、大人の生活費指数は100、15歳以上の子どもは90、0歳から14歳までの子どもの生活費指数は55です。

ステップ1-3

ステップ1-1で求めた義務者の基礎収入にステップ1-2で求めた割合を乗じることで、子の生活費が求められる。

ステップ2

子の生活費のうち、義務者が支払うべき金額(養育費)を算出する。計算式は次のとおり。

子の生活費×{義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)}

ステップ2-1

権利者の基礎収入を算出する。(義務者の基礎収入はステップ1-1で算出済み)

ステップ2-2

義務者と権利者双方の基礎収入の合計額のうち、義務者の基礎収入が占める割合を算出する。
義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

ステップ2-3

ステップ1で求めた子の生活費に、ステップ2-2で求めた割合を乗じることで、義務者が権利者に支払うべき養育費の額が算出される。

計算例
言葉だけでは分かりづらいので、例を示してみましょう。

例:
A男さん(45歳、給与所得者、年収1000万円)とB子さん(38歳、パート主婦、年収50万円)の夫婦には、長女のC子さん(15歳、高校生、年収0円)と長男のD男さん(8歳、小学生、年収0円)がいる。A男さんとB子さんは離婚することになり、2人の子どもの親権はB子さんが持つことになった。標準的算定方式に基づきB子さんがA男さんに求められる養育費の額はいくらか。

ステップ1-1

A男さんの基礎収入:10,000,000円×0.35=3,500,000円

ステップ1-2

A男さん、C子さん、D男さんの生活費指数=それぞれ100、90、55
(90+55)÷(100+90+55)=145÷245≒0.591

ステップ1-3

3,500,000円×0.591=2,068,500円

ステップ2-1

B子さんの基礎収入:500,000円×0.42=210,000円

ステップ2-2

3,500,000円÷(210,000円+3,500,000円)=0.943

ステップ2-3

2,068,500円×0.943=1,950,595円(年額)

以上のとおり、養育費の額は年額では1,950,595円、月額では約16万2000円となります。

上記の計算過程は複雑ですので、裁判所は一般の方向けに、「簡易算定表」と呼ばれるものを公表しています。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

裁判所が公表している簡易算定表のうち、「表4 養育費・子2人表(第1子15~19歳、第2子0~14歳)」)を参照すると、グラフに示される金額と上記計算結果がほぼ同じであることが分かります。

しかし、実際には、家族構成が算定表の事例と適合しなかったり、特殊な事情があり算定表をそのまま当てはめるのが適切でないご家庭も沢山あります。

ご自分のケースについての具体的な算定を当事務所に依頼されたい方は、
ぜひお問い合わせ下さい。

算定表の金額では足りない
Q6
算定表の金額(標準的算定方式に基づく金額)では、子どもにきちんとした生活をさせるには足りません。算定表に従わなければならないのですか。
A6

家庭裁判所において養育費の額が争われる場合、裁判所は、金額を簡易迅速に算定するため、標準的算定方式を用いることが、一応実務上定着しています。しかし、もちろん、常に標準的算定方式通りでなければならないということはありません。
相手方との交渉次第で、算定表の金額を大きく超える金額の婚姻費用を払ってもらうことも、もちろん可能です。

また、標準的算定方式を基準にする場合でも、子どもの私立学校の学費、学習塾にかかる費用、子どもが定期的に通院している場合の医療費などがかかっている場合など、養育費の金額が算定表より増額されるケースは多くあります。

大切なのは、裁判所が養育費の増額事由として認めている要素を、法的理論の裏付けと共に主張することです。
裁判所はあくまで中立性・公平性を保ちますから、裁判所の方から積極的に片方の当事者に助言をすることはありません。当事者の方から、法的に筋の通った主張をしない限り、裁判所の判断の対象としてもらえないのです。
それに、当職がこれまでに数多くの離婚調停・養育費請求調停事件を担当してきた中で、標準的算定方式の理論を十分に理解していないと思われる(特殊事情があるにも拘わらず、算定表通りとしか言わない)調停委員にも会いました。そのような場合は、なぜその事件では「算定表通り」の金額が妥当でないのか、筋道を立てて説明する必要があります。判例や有力な学者の論文を引用することも重要です。

すもも法律事務所では、精緻な理論構成、判例リサーチに基づき、算定表の金額を大幅に超える金額の養育費を獲得した実績があります。

算定表通りの金額では足りないと考えておられる方、
ぜひすもも法律事務所にご相談下さい。

私立学校の学費の扱いは
Q7
私と夫は離婚することになり、子ども(中学1年生)の親権者は私ということでは合意できていますが、養育費の金額で争っています。子どもは私立中学に通っており、当然公立校より高額の学費がかかりますが、夫は、きっちり算定表通りの金額しか払わない、私立学校の学費はその中から出せと無理難題を言っています。子どもを私立学校に入れることは夫自身が希望していたことなのに、私への嫌がらせで、子どもの学費をケチるなんて許せません。私立学校の学費を払わせることはできますか。
A7

標準的算定方式では、子どもが公立校に通っていることを前提としています。従って、子どもが私立校に通っている場合は、権利者(受け取る側)からすれば、養育費の額が足りないと感じられるでしょう。
裁判実務上、子が私立の学校に通うことに合理性がある場合は、義務者に私立学校の学費を負担させることができると考えられています。義務者が、子の私立学校への進学を承諾している場合が典型です。また、承諾していなくとも、義務者の収入・学歴・地位などから、私立学校への進学が合理的といえる場合(義務者に十分な収入がある、義務者自身も私立校に進学していたなどの事情が考慮されます)には、私立校の学費の支払を義務者に求めることができる可能性もあります。
ご質問のケースでは、子どもの私立中学への進学に夫は同意していましたので、私立中学の学費(※)のうち、双方の基礎収入額で按分した額を夫は負担すべきということになります。
(※標準的算定方式により算出される養育費の中には、公立校に通った場合の学費相当額も含まれています。公立校とはいえ、学校関連費としてかかるお金はゼロではないからです。従って、上乗せされるのは、その差額分ということになります。)

このように、算定表に当てはまらないケースでも、標準的算定方式で用いられている基本的な考えを応用することで、適切な婚姻費用の額を算出することが可能です。


ご自分のケースについての具体的な算定を当事務所に依頼されたい方は、
ぜひお問い合わせ下さい。

子との面会交流

面会交流とは、父又は母が子どもと面接したり、それ以外の方法(たとえば手紙や電子メール、テレビ電話でのやり取りなど)で交流を持つことです。

 

少し前まで、日本では、両親が離婚した場合に、子どもを引き取らない方の親(非監護親)と子どもとの面会交流について、明確に定めた規定はありませんでした。しかし、平成24年から適用されることになった、改正民法(766条)は、父母が離婚する場合には、子どもとの面会や交流について定めることと規定しています(1項)。この場合において、子どもの利益を最優先にして考慮しなければならないと定められています(3項)。

 

子との面会交流についても、夫婦間の協議が調わない場合、家庭裁判所に調停を申し立て、それでも合意できない場合は、審判、裁判手続に進むことになります。

子の引き渡し

子どもの引渡しを請求する手段として、家庭裁判所に、子の引渡しに関する調停又は審判の申立てをする方法があります。

離婚前でも離婚後でも申し立てることができます。

 

※離婚後の場合

離婚後であれば、父母のどちらが子どもの親権者であるか決まっているはずです(民法819条1項)。

親権者と定められた一方の親から子が奪われた場合、奪われた親(親権者)は、子を連れ去った相手方に対し、子の引渡しに関する調停又は審判を申し立てることができます。

子の引渡し調停又は審判は、非親権者である親が親権者である親に対して申し立てることもできます。ただし、その場合には、同時に親権者変更調停又は審判を家庭裁判所に申し立てる必要があります。親権者の変更は、当事者間の合意のみではできません。

 

※離婚前の場合

 離婚前であれば、夫婦のいずれも、子どもに対する親権・監護権を有するのが原則です。夫婦仲が良い間、又は夫婦仲は悪化しても子どもの監護をどちらが行うかについては夫婦間で合意されている場合は、子の引渡し問題は起きません。

 

しかし、夫婦仲が悪化し、双方が離婚を視野に考え始め、しかも双方ともに離婚後に親権・監護権を取得したいと考える場合には、子の引渡しを巡る問題が生じることになります。例えば、夫婦のどちらかが子どもを連れて別居し、単独で子どもの監護を開始した後、残された親が、子どもの通う保育園・学校や相手の実家などを突然訪ねて子どもを強引に連れ去るなどした場合、夫婦間に激しい対立が生じることになります。残された親が、子どもと一時的に遊ぶ名目で子どもを連れ出したまま返さないケースなども同様です。

 

上記のようなケースで、子どもを奪われた親が更にまた子どもを力づくで取り返すこともまた、法的に許されない自力救済となる可能性があります。家庭裁判所に「子の引渡し」調停又は審判を申し立てるというように、適法な法的手続を踏むべきです。もちろん、最初に相手方配偶者の(突然の)別居により子どもを奪われた形になる親(上記の「残された親」)にしても同様です。

 

※違法な手段により監護が開始された場合

従来は、現に子どもを監護している親の下で子どもが安定した生活を送っていれば、現状を尊重すべきと理解されてきました。そのため、当初実力行使による監護が開始された場合でも、裁判所が判断する段階で子どもが安定した生活を送っていれば、現状を追認するという傾向が見られました。

しかし、近年、裁判所は、実力行使や違法な奪取行為により監護が開始された場合には、特段の事情のない限り、違法な手段による監護を追認することは許されないとする立場を取っています。従って、自力救済的に力づくで子どもを奪い去ったり、約束に反して子どもを返さないということを行った親は、どちらが監護者として適切かを裁判所が判断する際に、不利になる可能性が高くなります

 

事務所案内

すもも法律事務所

〒104-0032
東京都中央区八丁堀一丁目13番10号
三神興業ビルディング8階

TEL.03(6280)3801

FAX.03(6280)3802

E-mail.info@sumomo-law.jp

お問い合わせ