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夫婦が資産形成の一環として取得した「共有財産」としての株式は預貯金や自宅土地・建物と同様に「財産分与」の対象になります。ここでは株式の性質に応じて、便宜上、上場株式等、非上場株式及び自社株式の3つに区分してご説明します。
【上場株式等】
上場株式等とは、国債、市場公募地方債、社債、私募債、転換社債、上場株式、株式投資信託、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)等を指します。NISAとして知られる「少額投資非課税制度」を利用した投資も含みます。同様に養老保険や終身保険等の生命保険も「財産分与」の対象となる場合があります。
上場株式等の「財産分与」に当たっては、対象となる上場株式等の「清算の基準時」と「評価の基準時」を区別して検討します。通常、別居開始時を「清算の基準時」としてそれぞれの上場株式等が「財産分与」の対象か否かを決定します。
上場株式等の市場価格は明確ですので、「評価の基準時」に争いがなければ評価額の特定は容易です。しかし、上場株式等の市場価格が日々変動するため、「評価の基準時」が争点になることは珍しくありません。
実務上、「協議離婚」や「調停離婚」の場合は「清算の基準時」と「評価の基準時」をともに別居日とする場合もあれば、「清算の基準時」は別居日として「評価の基準時」は「離婚」成立日又は直近の市場営業日における市場価格とする場合もあります。「離婚訴訟」の場合は「事実審」(第一審である家庭裁判所または控訴審である高等裁判所における訴訟手続)の「口頭弁論」終結時の市場価格を「評価の基準時」とすることが一般的です。
【自社株式】
夫婦いずれか又は一定の関係にある親族が経営する会社の株式を自社株式あるいは自社株と呼ぶことがあります。夫婦の「共有財産」である自社株式を「財産分与」する際には会社に対する支配権への影響を考慮する必要があります。
夫婦の信頼関係が失われた結果「離婚」に至る以上、会社の共同経営者や一族会社の有力株主として協力して会社運営に携わることは困難です。株式の第三者への分散が将来の自社の合併・買収(M&A)に与える影響も決して小さくありません。
したがって、自社株式の「財産分与」は避け、「共有財産」の対象となる自社株式の評価額に相当する金銭を「財産分与」する方法が一般的です。
【非上場株式】
夫婦のいずれかが経営する会社の株式(自社株)ではなくても、スタートアップ企業等への投資に際して割り当てられた非上場株式の「財産分与」には注意が必要です。
非上場株式は株式市場で売買されていないため、夫婦が婚姻期間中に得た収入を投資して取得した非上場株式を「財産分与」する際は「離婚」時の評価額が常に問題になります。「財産分与」における非上場株式の評価方法について確立した最高裁判例があるとはいえませんが、調停実務や裁判実務においては、「純資産価額方式」、「類似業種比準価額方式」、「配当還元方式」または複数の評価方式の「混合方式」が採用されたり、公認会計士に鑑定を依頼してその鑑定額を参考にするケースがあります。
非上場株式が「財産分与」の対象となる場合、①株式自体を分割する方法(例えば、夫所有の非上場株式100株のうち50株を妻に「財産分与」する)、②株式の名義は変更せずに(元々夫が自己名義で100株保有していた名義はそのまま)50株分の評価額に相当する金銭「代償金」を妻に「財産分与」する方法があります。
非上場株式の多くは譲渡が制限されている「譲渡制限株式」(会社法第2条第17項)ですので、株式発行会社が承認しなければ「財産分与」を受けた妻(上述の一例の場合)は株式発行会社に対して株主であることを主張できません。そのため、実務上は株式発行会社の承認が確実に得られる保証がない限り①の方法は採用できません。また、仮に夫から妻への「財産分与」時に株式発行会社の承認が得られたとしても、「財産分与」を受けた妻がこれを第三者に売却するためには改めて株式発行会社の承認を求める必要(会社法第136条、第137条)がありますので、「財産分与」を受けた後の換金・流動性に制約があります。
非上場株式の評価は「株式評価報告書」等の財務状況や新規上場計画等と密接に関連します。弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士及びファイナンシャル・プランニング技能士(FP)等の専門的助言を得てください。
ご依頼者のご心情に寄り添う対応を心がけています。先ずはお気軽にご相談ください。