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遺言がないと困る場合
In Absence of the Testament

 「被相続人」となる方がご自身の願いに沿って残される家族等に財産を配分したい、または、残される者たちによる争いを避けたいとお考えの場合は、有効な「遺言」を作成することが極めて重要です。

 ここでは、2つのケース・スタディから「遺言」を残さない場合の影響についてご理解いただければ幸いです。

 ケース・スタディ3 「相続」発生後に「相続人」の意向が変化 

 A氏家族には病気のために就労できない長男B男と安定した職に就いている二男C男がいます。A氏の妻は既に他界しています。二男C男はD美と結婚して幼子のE奈(A氏にとっては孫娘)がいます。

 A氏は病気のため就労できない長男B男の生活の安定のために遺産を多く残すことを希望していました。一度、二男C男と相談したところ二男C男は「自分は遺産なんかいらない。兄さん(長男B男)の事情は理解しているから『相続』は放棄するよ。」と言っていました。A氏と二男C男の親子関係は良好でしたし、長男B男と二男C男の仲も良かったので「遺言」を残さないまま亡くなりました。

 A氏の遺産は自宅土地(評価額6,000万円)、自宅建物(評価額2,000万円、A氏の生前はA氏と長男B男が居住)、預貯金(4,000万円)です。「遺言」がないため長男B男と二男C男の「法定相続分」は1/2ずつです。

遺産の全体像

自宅土地   評価額   6,000万円

自宅建物   評価額   2,000万円

預貯金          4,000万円

合  計       1億2,000万円

 二男C男は「相続」発生前及び直後はA氏の遺志を尊重して病気のため就労できない長男B男が安心して暮らせるよう「相続」を放棄するつもりだったのですが、妻D美から「何を言っているの。この先何があるか分からないし、E奈の教育資金だってこれからかかるのよ。お義兄さん(長男B男)はこれまでもちょくちょくお義父さん(A氏)から援助してもらっていたじゃない。何であなたがお義兄さん(長男B男)のために「相続」を放棄しなきゃならないの。E奈のためにも自分の権利はしっかり主張してよ。」と強く言われ「相続」に関する考えを変えました。

 そして、二男C男は長男B男に対し「法定相続分」どおりの「遺産分割」を主張しました。長男B男は自らが土地建物を「相続」して住み慣れた自宅に居住し、二男C男がA氏の遺産から預貯金4,000万円全額を取得するように遺産を分割することを考えていました。しかし、「法定相続分」どおりの「遺産分割」となると、長男B男が遺産の評価額の2/3を占める土地建物を取得した場合、二男C男に代償金2,000万円を支払う必要がありますが、B男に資力はありません。

「被相続人」A氏の希望

自宅土地   評価額   6,000万円  ★長男B男が相続

自宅建物   評価額   2,000万円  ★長男B男が相続

預貯金          4,000万円  ★二男C男が相続

合  計       1億2,000万円

 結局、長と二男C男は自宅土地建物を売却して売却金額(売却にかかる経費を除く。)と預貯金をきっかり1/2ずつ分割して「相続」することとなりました。

遺産分割協議の結果

自宅売却益及び預貯金   6,000万円  ★長男B男が相続

自宅売却益及び預貯金   6,000万円  ★二男C男が相続

合  計       1億2,000万円

 このケースでは、A氏が生前に願っていた「病気のために就労できない長Bに遺産を多く残してやりたい。」という思いが叶わなかったのは明らかです。A氏は二男C男の言葉を信じていましたし長と長男C男の兄弟仲も良かったので「遺言」は不要と考えたのかもしれませんが人の気持ちは変わるものです。「相続人」が「相続人」でない家族(本件では二男C男の妻D美)から強く言われて考えを変えるということも珍しくありません。このような事態を避けるために「被相続者」として採り得る幾つかの手段があります。

  「被相続人」A氏の「遺言」パターン1・・・「遺留分」侵害なし 

 例えば、「自宅の土地・建物(土地評価額6,000万円、建物評価額2,000万円、合計8,000万円)は長男B男、預貯金のうち1,000万円は長男B男、預貯金のうち3,000万円は二男C男に相続させる」という「遺言」内容であれば二男C男の「遺留分」を侵害することはありません。 

 自宅土地   評価額   6,000万円  ★長男B男が相続

 自宅建物   評価額   2,000万円  ★長男B男が相続

 預貯金          1,000万円  ★長男B男が相続

 預貯金          3,000万円  ★二男C男が相続

 合  計       1億2,000万円

 二男C男の「遺留分」は遺産の1/2の1/2=1/4です。長男B男の相続額が土地建物8,000万円、預貯金1,000万円、合計9,000万円、遺産総額1億2,000万円の3/4、二男C男の相続額が預貯金のみ3,000万円、遺産総額1億2,000万円の1/4であれば「遺留分」1/4を侵害しません。

『 「被相続人」A氏の「遺言」パターン2・・・「遺留分」侵害あり 

 推定「相続人」の「遺留分」を侵害する内容の「遺言」も有効です。

 A氏は「自宅の土地・建物(土地評価額6,000万円、建物評価額2,000万円、合計8,000万円)は長男B男、預貯金4,000万円のうち3,000万円は長男B男、1,000万円は二男C男に相続させる」という「遺言」を作成することも可能です。

 自宅土地   評価額   6,000万円  ★長男B男が相続

 自宅建物   評価額   2,000万円  ★長男B男が相続

 預貯金          3,000万円  ★長男B男が相続

 預貯金          1,000万円  ★二男C男が相続

 合  計       1億2,000万円

 但し、二男C男が長男B男に対して民法第1046条に基づく遺留分侵害額請求権を行使すれば、長男B男は二男C男の「遺留分」を侵害する代償金を二男C男に支払わなければなりません。長男B男の生活の安定という観点からはお勧めできません。

 もっとも、父の「遺言」があるなら仕方ないと二男C男(とさらにその妻D美)が納得することも考えられます。A氏は「遺言」を作成する際に二男C男に対して「長男B男は病気のため就労できず将来に不安があるので遺産は長男B男に多く相続させることについて理解して欲しい」というように不均等な遺産配分の理由を丁寧に説明することが重要です。

 実際に、「遺言」の中で不均等な配分を受けた「相続人」が「『遺言』どおりなのだから仕方ない」として敢えて遺留分侵害額請求権を行使しなかった事例も少なくありません。

 「被相続人」A氏の「遺言」パターン3・・・「遺留分」放棄 

 「相続」発生前に「相続」を放棄することはできません。しかし、家庭裁判所の審判で許可を受けて「遺留分」を放棄することは可能です。

 推定「相続人」自身が「遺留分」を放棄する旨を申立てる必要がありますので、当然ながら推定「相続人」(本件では二男C男)が真に納得しなければなりません。

 二男C男(とさらにその妻D美)にしてみれば、いくら長男B男の事情(病気)を理解していても見返りなく「遺留分」を放棄することには消極的になるでしょう。A氏としては次に挙げる「生前贈与」等により二男C男家族に金銭を「贈与」することで「遺留分」放棄に同意を得ることができる可能性があります。

  •  結婚・子育て資金の一括贈与(一定の要件下で1,000万円まで贈与税非課税)
  •  住宅取得資金等の贈与(一定の要件下で1,000万円まで贈与税非課税)
  •  教育資金の一括贈与(一定の要件下で1,500万円まで贈与税非課税)

 生命保険を活用した実質的な遺産配分

 生命保険金は基本的に受取人固有の権利ですので、A氏は長男B男を受取人とした生命保険に加入しておくことで長男B男の実質的な遺産の配分を増額させることができます。

 但し、最高裁は、保険金の額、保険金の額の遺産総額に対する比率等を考慮し、民法第903条「特別受益」の趣旨に照らして到底是認できないほど「相続人」間の不公平が著しいと評価すべき「特段の事情」がある場合には例外的に生命保険金が「特別受益」となり得ると示していますので注意が必要です。(最高裁判所最高裁判所平成16年10月29日決定、最高裁判所民事判例集第58巻第7号第1979頁)

 例えば、生命保険金が遺産額とほぼ同額であるなど極端に高額である場合には長男B男に対する「特別受益」として遺産に持ち戻されてしまう可能性があることにご留意下さい。

 A氏は生前に長男B男に一定の「財産」を贈与した上で持ち戻し免除の意思表示を書面で残しておくことも考えられます。持ち戻し免除の意思表示により、長男B男への生前贈与分は「特別受益」として「遺産分割」の際に遺産に持ち戻すことなく「贈与」した額を除外した上で長男B男と二男C男の「相続分」を計算することになります。

 なお、持ち戻し免除の意思表示は口頭でも法的には有効ですが、紛争回避の観点からは書面で行うことが重要です。持ち戻し免除の意思表示は「遺言」で行うことをお勧めします。

 ケース・スタディ4 「相続」発生後に疎遠な親族が「法定相続分」を主張 

 F氏と妻G子は長年睦まじく暮らしてきました。二人の間に子はいません。F氏の両親はすでに他界しており、F氏には兄H男がいます。F氏は自分の幼少時に親に隠れて自分を虐めていたH男に良い感情を持っておらず、日ごろから殆ど親戚づきあいもなく疎遠にしていました。

 F氏にとっては家族といえばG子しかいないことから、自分の死後は当然妻であるG子がすべての財産を「相続」するものと漠然と考えていました。

 F氏は長年勤めた会社を定年退職後はG子と二人で共通の趣味を楽しみながらのんびり暮らそうと考えていたのですが不慮の事故で亡くなってしまいました。F氏は日ごろから健康には自信があり自分の死期はずっと先だと思っていたため「遺言」は未作成でした。

 F氏の葬儀の後、F氏の兄H男はG子に対して「F氏の遺産を『法定相続分』どおりに『分割』」するよう要求しました。「遺言」がなかったためF氏の遺産は妻G子が3/4、兄H男が1/4の「法定相続分」を有することになります。

 F氏は日ごろから疎遠であった兄H男が自分の遺産を1/4も「相続」することになるとは思っていなかったと思われます。生前に妻G子が全財産を「相続」するという内容の「遺言」を作成しておくことが、F氏の生前の希望に叶ったであろうと思われます。

 兄弟には「遺留分」はないため、F氏が生前、「妻G子に全財産を相続させる」という内容の「遺言」を作成しておけば疎遠であった兄H男には一円も渡さず妻G子のみに「相続」させることが可能でした。

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代表弁護士ごあいさつ

洲桃(すもも)麻由子
  • 弁護士
  • ニューヨーク州弁護士
  • 税理士
  • 行政書士
  • 登録政治資金監査人
  • 東京出入国在留管理局長承認取次者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

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