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「協議離婚」
日本では裁判所を介さず当事者のみの合意で「離婚」が可能です。何らかの形で裁判所を介さなければ「離婚」できない国が多いなかで日本の「協議離婚」は国際的には珍しい制度といわれています。
「離婚」そのものは「離婚届」に所定の事項を記入し夫婦が署名して役所に提出し受理されれば成立します。「離婚届」の中には、未成熟の子がいる場合に夫婦のいずれが「親権者」になるか記入する欄があり「親権者」の記入がなければ受理されません。しかし、「財産分与」や「養育費」の取決めはなくても「離婚届」は受理されます。したがって、「財産分与」や「養育費」等、重要な取決めが未了の状況で立場的に弱い方の配偶者が相手から押し切られるままに「離婚届」の提出に合意してしまうケースもあるようです。
「離婚」自体には異存なくとも「財産分与」や「養育費」等、「離婚」に付随して取り決めるべき各種の条件について納得ができないのであれば安易に「協議離婚」に応じるべきではありません。「離婚届」に署名する前に弁護士など専門家の助言を得て「親権」、「面会交流」、「財産分与」、「養育費」等の条件を明確にして「離婚協議書」を作成することをお勧めします。
当事者が日本人同士である場合は通常問題になりませんが、いずれか一方(または双方)が外国人である場合「協議離婚」はあまりお勧めできません。というのは、前述のとおり「協議離婚」制度がない国の方が多いため、ご夫婦の本国では日本で成立した「協議離婚」が有効に承認されないおそれが(裁判所を介した離婚に比べて)格段に高くなるためです。
「調停離婚」
家庭裁判所において「調停委員会」を介して「離婚」に関する協議を行い合意を目指す手続である「調停」を経た離婚を「調停離婚」といいます。
「調停委員会は」、通常、裁判官又は調停官1名と「調停委員」2名の計3名で構成されます。但し、裁判官や調停官は多数の案件を同時に抱えているため、通常の「調停」手続で当事者に対応するのは2名の「調停委員」であることが殆どです。
「調停」は裁判所の手続ですがあくまで夫婦双方が「離婚」及び「離婚」に付随するすべての条件について合意に達しないと成立しません。とはいえ、当事者同士では感情的になって協議が進まないようなケースでも公平な第三者である「調停委員」が仲介することで合意に至ることは多くあります。
「調停」の管轄裁判所は「相手方」の住所地を管轄する裁判所又は当事者が合意する家庭裁判所です。
合意が成立すると裁判所が「調停調書」という書面に当事者が「離婚」する旨と「離婚」に付随する各条件を記載します。その合意が「調停調書」に記載された場合、その記載は確定した「審判」と同一の効力があります。
特に、「離婚」に付随して相手方から支払いを受ける方の配偶者にとってのメリットとして、もし支払義務者が「調停調書」に記載した約束を守らず支払いをしない場合には「調停調書」を「債務名義」として直ちに支払義務者の有する銀行口座や給与債権等に対して「強制執行」が可能になる点があります。このような「執行力」は通常の契約書(「離婚協議書」)にはありません。「離婚協議書」を「公正証書」(但し「強制執行認諾文言」が必要です。)にすれば「執行力」を付けることは可能ですが、「公正証書」を作成すると「公正証書」作成料もかかりますし公証役場での煩雑な手続を当事者が忌避することもあります。自動的に執行力が付く「調停調書」により離婚条件を定めることのメリットがお分かりいただけるでしょう。
支払義務者にとっても裁判所という公正な機関を介した「調停離婚」とすることで「協議離婚」に比べて事後的に相手方が「離婚無効」や「条件の不当性」などを主張して争う可能性を低くすることができるメリットもあるといえます。
「調停調書」は家庭裁判所書記官が作成する書面であり「調停」が成立した裁判所名や調停官の名も記載されます。上述のとおり「協議離婚」は国外では承認されないおそれも高いため日本国内で成立した「離婚」を外国で承認してほしいという要望をご夫婦がお持ちの場合は実質上争いがなくとも「調停離婚」の形で離婚する方が安心であるといえるでしょう。
なお、「調停離婚」についても必ず外国で承認されるというわけではなく承認するか否かは当該外国の法に基づいて判断されることであることにご注意下さい。
「審判離婚」
「調停」が不成立となった場合、通常はそれで手続が終了します。しかし、中には、双方当事者が、ほぼすべての条件について合意しているものの「調停」が成立しないというケースもあります。「調停」成立直前に当事者が行方不明になったり感情のもつれから最後の最後で裁判所への出頭を拒否したり、法的にみればごく些少な点で争いが残っている場合などがあります。
そのような場合に、家庭裁判所の裁判官が「本件については『離婚』を成立させた方が良い」と判断した場合は職権で「離婚」の「審判」を下すことが可能です。(家事事件手続法第284条第1項「家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。」)
「審判」は当事者が2週間以内に異議申し立てをすれば効力を失います。期間内に異議申し立てがなければ確定し確定判決と同じ効力を持つことになります。
実際には当事者がほぼすべての条件に合意しているがあと一歩のところで「調停」が成立しないという状況そのものがそれほど頻繁には生じないため、「審判離婚」は「調停離婚」及び「裁判離婚」に比べて数も少なく「離婚」に至る手続としてはかなり例外的です。但し、「審判離婚」では裁判官が作成する「審判書」に当事者が「離婚」する旨や「離婚」条件が記載されますので、「協議離婚」、更に「調停離婚」よりも更に外国でも日本で成立した「離婚」の有効性が承認されやすいといえます。そのため、当事者の一方が外国人である場合にできる限り外国で承認される可能性を高めるため敢えて当事者双方が共同で希望した上で裁判官に対して「審判離婚」として頂くよう依頼するケースもあります。
「裁判離婚」
「調停」が不成立となり、「審判」にも移行しない場合は、一旦離婚に関する法的手続は終了します。したがって、離婚を希望する当事者は、改めて家庭裁判所に「離婚訴訟(離婚裁判)」を提起する必要があります。管轄裁判所は、原則として原告又は被告の住所地を管轄する家庭裁判所です。その裁判所と訴訟提起前に離婚調停を扱った家庭裁判所が異なる場合には、離婚調停を扱った家庭裁判所が管轄裁判所となることもあります。
離婚を認容する判決が下りかつそれが確定すれば「協議離婚」や「調停離婚」と異なり、相手方(被告)が同意しなくとも強制的に離婚することが可能です。
但し、我が国では、初めから「離婚訴訟」を提起することは原則としてできず、先に「離婚調停」を申し立てて話し合いによる解決の段階を経る必要があります。これを「調停前置主義」といいます。(家事事件手続法257条)
「離婚訴訟」では離婚したい方(原告)が「法定離婚事由」を主張立証する必要があります。「法定離婚事由」がない場合は離婚請求は裁判官により棄却されます。この「法定離婚事由」は民法第770条第1項に定められています。
1号 不貞行為
2号 悪意の遺棄
3号 3年以上の生死不明
4号 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由
「離婚訴訟」の審理は短くとも数か月、長い場合は1~2年に亘ることも珍しくありません。もっとも、訴訟手続の途中で当事者の合意が成立し「和解」により訴訟が終了したり、あるいは被告が原告の離婚請求を受け入れて「認諾」することで判決が下されることなく訴訟手続が終了することもあります。
「和解離婚」(裁判上の和解)
訴訟手続の中で裁判官の関与の下に当事者同士で和解協議を行い合意が成立した場合は「裁判上の和解」により離婚訴訟手続を終了させることができます。離婚訴訟に限らず多くの民事訴訟で、裁判官は一度は和解協議の可能性があるかを当事者に打診するのが普通です。裁判上の和解成立により訴訟手続が終了する場合、当事者にとっては①即座に確定する(判決と異なり上訴審に移行することがない)、②判決の場合は取り上げてもらえないような細かい条件も和解条項には盛り込むことができ判決よりはるかに柔軟性があるというメリットがあります。
和解調書には確定判決と同一の効力があります。したがって、もし一方当事者が、和解調書に記載された和解条件(金銭の支払約束など)を遵守せず支払義務を履行しない場合、権利者(支払を受ける方)は義務者の預貯金や給料債権等を差し押さえ強制執行することが可能です。
ご依頼者のご心情に寄り添う対応を心がけています。先ずはお気軽にご相談ください。